佐久から安曇野

’１５秋佐久から北杜そして安曇野（１ )

イバイチの
旅のつれづれ

　佐久から北杜(別荘)そして安曇野
　　　（平成２７年１０月１５日～１０月１７日）　第１日
　　佐久市五稜郭など－
　　佐久穂町八千穂高原－
　　松原湖－八ヶ岳別荘 (泊)
　第２日
　　安曇野市穂高神社－
　　大王わさび園－常念坊 (泊)
　第３日
　　安曇野市中房峡－
　　中房温泉－
　　北アルプス展望公園

　　　（自家用車で）
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1．始めに
　1年半振りに北杜市の貸別荘を点検に行く。自分の別荘なのだが年のせいで、最近は1年に1回行くか行かないかの利用状況である。場所は小淵沢から清里に行く八ヶ岳高原ラインと云う観光道路から少し下がった所にあるネオオリエンタルリゾート八ヶ岳泉郷と云う場所で、㈱セラヴィリゾート泉郷が貸別荘として運営してくれており、掃除もやってくれるので、1年に1回の建物の状況を点検に行くのである。欲しい人があれば譲りたいと思っているのだが、なかなかうまく条件が合わない。

　それはそれとして今回は１０月１５日から２泊３日の行程で、上信越高速道路を降車するＩＣである佐久市の寺院旧跡を訪ねた後、白樺の純林として名高い八千穂高原の秋の景色を眺めて北杜市に行き、さらに安曇野まで足を延ばすことにした。

　佐久ＩＣを降りると、その真ん前に｢峠の釜めし｣で知られた「おぎのや」がある。以前はここで昼食を取ることが多かったが、今日は朝６時半に北関東道の水戸南ＩＣから高速道路に乗り、東北道と関越道を少し経由して上信越道の佐久ＩＣに降りた時は午前９時半だった。高速道路が無い頃、国道50号線、国道18号線を乗り継いで昼過ぎまで掛って来た頃のことを思うと隔世の感がある。

２．佐久　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
２－１　鼻顔（はなずら）稲荷神社

　佐久からは国道141号で清里に向かうのだが、今迄佐久市で立寄ったのは佐久市立近代美術館で平山郁夫の「仏教伝来」などの日本画を見に3回ほど、また旧中込学校を見学した事ぐらいしか無かった。今回は殆ど通過するだけだった佐久市をもっとよく見てみたいと思ったのである。

　観光案内を見ると古い寺院が多くありそうなので、その内３カ所を選んで行くことにした。またぴんころ地蔵が観光ポイントの１番大きい見出しにあったので、そこもお参りすることにした。また日本で函館とここにしか無い五稜郭にも行って見る事にした。

　先ず最初は佐久ＩＣから一番近い岩村田と云う場所にある｢鼻顔（はなずら）稲荷神社｣に行くことにした。この神社は京都清水寺と同じ懸崖造りと云う事なので見たいと思ったのである。茨城県にも｢峰寺山西光院｣という懸崖造りの寺があるので、それとも比較してみたいと思った。

　小生の車は購入してから９年経つ日産のティーダ・ラティオでナビがついて居ないので、まず「おぎのや」に立ち寄って神社の場所を教えて貰い出発した。途中道路工事で止められたので、｢鼻顔稲荷神社｣の場所はこの道でいいのかと聞いたら、この辺の者でないので判らないとのことだった。道路工事でも地元の人は少ないものと見える。

　広い道路を行くと左側に大きな神社の標柱と鳥居が見えた。道路の右側に３～４台位しか止まれない小さな駐車場があった。そこに車を止めて神社の中に入った。（写真は神社入り口）

　入口付近に神社の解説板が置かれている。それによると日本５大稲荷の一つなのだそうである。戦国時代の永禄年間に京都の伏見稲荷から勧請されてこの鼻顔（はなづら）の地に創建されたそうである。（写真は神社の案内板と参道）

　鳥居が並ぶ参道を行くと神楽殿があり、その先から石段を上って懸崖造りの本殿に行けるのだがフェンスで閉ざされ通行禁止になっていた。側に置かれた案内によると今年４月に発生した竜巻により、拝殿、本殿の屋根が吹き飛び、７月から始めた改修工事のため１１月末まで入れないとのことである。（写真は紅葉が始まったばかりの参道、神楽殿、閉ざされた階段の登り口、改修工事着手のお知らせ板）

　遥かに眺めると木の間を通して青いビニールで覆われた社殿の様なものがあるが、入れないので引き返すことにした。ネットから社殿の画像を転用したので、残念だが其れを見て貰うしかない。（対岸からの改修前の本殿）

２－２　ぴんころ地蔵尊　　
　
 　鼻顔稲荷神社は佐久市岩村田という市の北部にあるが、ぴんころ地蔵は中央部の中込・野沢地区にある。千曲川を国道２５４号の佐久大橋で渡り左折すると直ぐ成田山薬師寺があり、その参道の一部にあった。（写真は薬師寺本殿、ぴんころ地蔵のある参道）

　長野県は全国一の長寿県だが、その中でも信州佐久は日本でも有数の長寿の里とされている。佐久市の９０才以上の平均余命は３．９才でそのうち活動余命は２．２才だそうで、亡くなる直前まで健康で長生きし（ピンピン）楽に大往生する（コロリ）”＝ピン・ピン・コロリがデータ上でも実証されていると云うことである。（写真は参拝の順番を待つ人々）

　ぴんころ地蔵は平成１５年に建立された高さ約１ｍの地蔵尊（長寿地蔵尊）で、毎月第２土曜日に山門市が開かれ、ぴんころグッズを始めとする地元の名産品や季節の農産物などが販売されて大変な賑わいになるそうである。
　参詣した人たちは地蔵さんの、自分の身体の悪いところにあたる場所をなでていた。（写真はぴんころ地蔵、案内板、地蔵をなでる人々）

　　茨城県水戸市谷中の二十三夜尊桂岸寺にも平成１９年に建立されたぴんころ地蔵尊（延命地蔵尊）があり、毎月２３日にぴんころ地蔵尊ご縁日があり参拝者で賑わっているが、ここのにぴんころ地蔵にあやかって始めたのかもしれない。

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　ぴんころ地蔵から国道１４１号に出て、洞源湖への看板がある信号を右折すると山裾に貞祥寺がある。この寺は室町時代末期の大永元年（1521）にこの地の領主だった伴野氏が開山した曹洞宗の寺である。この寺は七堂伽藍が整った大寺であり、参道の左右は美しい苔の回廊になっていて、京都の西芳寺に似た趣きがある。（写真は貞祥寺の案内板）

　洞源湖側の山裾にある境内入口から山内に入ると、直ぐ左側に茅葺き屋根の小諸時代の「島崎藤村の旧宅」が佇んでいる。藤村が小諸義塾の教師をしていた明治３２年から６年間過ごした家である。内部も見学できるが生憎この日は休館日で見られなかった。写真は境内入口付近、藤村の旧宅、解説板）

　石段が続く参道を登って行く。境内にはケヤキなどの大木が数多く植えられている。敷石の参道以外は見渡す限り緑の苔に覆われていて、心が落ち着く思いがする。やがて大木をくり抜いた樋で山内から湧きだす水を引いている手水舎が見えてくる。（写真は苔が生える参道２景、手水舎）

　近くには江戸時代初期の承応２年（1653）建立と云うこの寺最古の建物である惣門が建っている。続いて惣門の１９年後に建立された茅葺きの山門があり、左右に増長天と持国天の仁王尊が安置されている。惣門、山門とも長野県宝である。（写真は惣門と山門）

　山門を過ぎると正面に約３百年前の江戸中期に再建された本堂がある。長野県内の曹洞宗寺院のうち最古のものだそうである。本堂の左手には僧堂がある。僧堂は僧侶が集団生活を行いながら修行をする場所であるが、ここでは定期的に坐禅会が開催されている。貞祥寺は現在でも著名な禅道場として海外に知られているそうである。（写真は貞祥寺本堂）

　更に左手奥に行くと石段があり、その上方に三重の塔がある。これも長野県宝になっているが、明治初めに松原湖にあった神光寺が廃寺になった時、移築したものだそうで、なかなか立派な塔である。
（写真は三重塔３景）

　貞祥寺境内には太平洋戦争末期の人間魚雷回天の記念碑ならびに１/３の魚雷の模型が展示されていた。回天の設計者の一人仁科関夫は佐久市の出身であり、敵艦に体当たりを敢行した。（写真は回天の碑と人間魚雷の模型、回転の碑の碑文）
碑文を次に記す。
　昭和十九年　太平洋戦争年を重ねて苛烈となり　戦勢ようやく我に利あらざる時憂国の至情に燃えて黒木博司少佐　仁科関夫少佐は第一特別基地隊に在りて前代未聞必死必殺の水中特攻兵器人間魚雷を完成もって頽勢の挽回を計らんと「回天」と命名　徳山湾大津島に基地を定め、日夜一人一艦必殺の戦法操縦訓練に励む黒木少佐は訓練に殉じたるも同年十一月回天特別攻撃隊菊水の先陣に立ちし仁科少佐以下敵前進基地ウルシー　パラオ　コッスル水道ホーランジア　グアム　アブラ港に、また硫黄島　沖縄付近海域中西部太平洋上に大津島　光　平生大神の各基地より出撃し敵艦に体当り攻撃を敢行せり　
　戦遂に利あらず昭和二十年八月　兵を収むるまで戦没並びに殉職搭乗員の英霊　百五十余柱　帰らざる潜水艦七隻　その乗員八百十余柱を数う　散華せし勇魂を迎慕し回天の偉業を後世に伝えんと　創始者仁科少佐の出身地佐久に永遠の世界平和を念じつつ　長野県出身者戦没並びに殉職搭乗員　仁科関夫少佐北村十二郎少尉　中島健太郎大尉　宮澤一信中尉　の霊安からんことを祈念し戦友相寄り「回天之碑」これを建つ
　　　　　　　　　　　　昭和五十一年六月六日　長野県回天会

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２－４　龍岡城五稜郭

　貞祥寺から国道１４１号に戻り、臼田から県道９３号線に入り五稜郭に行く。案内標識があるので迷わず行ける。

　龍岡城五稜郭は函館五稜郭と共に日本に二つしかない五つの稜堡が星形に突き出た西洋式土塁である。星型の城の起源は１６世紀のヨーロッパで町全体を城壁で囲んだ城郭都市が、攻撃してくる銃や大砲に対抗して防御側の死角を少なくする構造として考案されたものだそうである。（写真は龍岡城五稜郭解説板---青色は現存する稜堡部分）

　龍岡城五稜郭は函館五稜郭が完成した３年後に着工され、函館五稜郭の半分ほどの規模であり、本来すべての稜堡に置かれるべき砲台は１基しか置かれなかった。着工から３年後の慶応３年に藩主の御殿や大手門が完成して竣工祝を行ったが、５稜堡のうち２稜堡は未完成だった。（写真は大手橋と堀）

　明治になり、建物は解体され堀も埋められたが、昭和初期に住民によって復元されたと云われている。城跡は小学校になっているが、御台所が現存して資料を展示している。また城址の前には｢佐久市歴史の里五稜郭出会いの館｣という五稜郭に関する資料や写真が展示され、休憩所にもなっている。（写真は御台所、出会いの館にある俯瞰図）

　しかし全体として見るべきところは少なく、大手橋から中に入っても案内板などが無いため、折角行っても拍子抜けしてしまう。せめて築城当時の建物があった場所だの、稜堡の１ヶ所だけでも整備して説明板でも置けばよいと思う。御台所が現存して居ることも「出会いの館」に行かなくては分からないのは不親切である。（写真は現存する堀２景）

　また五稜郭公園と云う場所が隣接した裏手にあり、その中に戦前アメリカに居住し、クーリッジ大統領や戦後マッカーサーの胸像などを作成した彫刻家の川村吾蔵記念館があると云うが、それについての情報が「出会いの館」には全然無い。本来ならば五稜郭城跡を含めて全体を五稜郭公園として整備すべきものだと思うが、どうなっているのだろうか。

２－５　新海三社神社　　

 　龍岡城五稜郭から県道９３号線を田口峠の方向に１ｋｍほど進むと左側の道端に大きな鳥居がある。新海三社神社の入り口である。（写真は県道に面した大鳥居、神社案内図、神社の解説と信玄の祈願文の解説）

　この神社は古い社で創祀年代は不詳と云う事である。主祭神を興波岐命（おきはぎのみこと）と云い佐久地方開拓の祖神ということである。又他の祭神に建御名方命、事代主命を祀っており、興波岐命を東本社に祀り、建御名方命を中本社に、事代主命を西本社に祀っているので新海（しんがい）三社神社と呼ばれている。この神社は佐久３庄３６郷の惣社と云う事である。昔から武将の崇敬があつく、源頼朝が修理再興したと云う口碑があり、武田信玄が戦勝祈願をした願文も残されている。（写真は拝殿２景、神楽殿）

　大きな神楽殿（舞殿）と並んで拝殿があり、その奥に朱漆で染められた西本社と中本社が並んだ本殿がある。　その間に御魂代石（みたましろいし）という祭神が降臨する時の燈籠の様な石が置かれているというが、よく見えなかった。（写真は西本社と中本社２景）

　それとは別に、神楽殿の奥に東本社の本殿があり、その奥に三重塔が聳えている。東本社に祀られている興波岐命は、中本社に祀られている諏訪大社の祭神である建御名方命の息子とされており、西本社の事代主命は興波岐命の伯父ということである。東本社は室町時代の建立で、国の重要文化財に指定されている。（写真は東本社２景、解説板）

　三重塔は以前この地にあった神宮寺の塔として室町時代に建立されたが、神宮寺は明治初期の廃仏毀釈により廃寺にされた。その時三重塔は新海三社神社の宝庫として破却をまぬがれている。東本社と併せて国の重要文化財に指定されている。解説の案内板が昭和２８年と最近のものと２基建てられていた。
　昼飯時で三重塔の下では遠足で来た近くの小学校の子供たちが賑やかに弁当を食べて居た。（写真は三重塔２景、案内板２基、三重塔と子供たち）

　広い駐車場に戻る。駐車場の後には多数の双体道祖神が置かれ、またこの付近の自然環境を守ろうという案内の表示があった。（写真は双体道祖神群、案内標示）

(以下次号)　　