函館1

函館浪漫紀行 (２） 大沼、函館ベイエリアなど　

イバイチの
旅のつれづれ

函館浪漫紀行（平成１８年５月２２日～５月２４日）

２．立待岬からトラピスチヌ修道院（５月２３日)

　翌朝、ホテルのすぐ前にある函館朝市の「きくよ食堂」に行く。この店は函館朝市海鮮丼発祥の店として昭和31年の創業以来全国的に有名なのだそうである。ここの一押しメニューはウニ、ホタテ、いくらがたっぷり載せてある巴丼で勿論それを注文した。現在の価格は1680円だが当時はもっと安かったと思う。丼だけではなく小鉢が二つと味噌汁、香の物、フルーツのデザートまで付いていた。1,000円分の朝食券付なので、追加額は2人で1,000円位だったと思う。(写真は朝市風景と「きくよ食堂」のチラシ）

　朝食後、函館駅に行きホンダフィットを借りる。当日19時までに湯の川温泉のホテルで返却することで3,570円だが、この頃はカーナビが標準装備では無くオプション扱いになっていて別に525円支払った。天候は雨が降ったり止んだりであまり良い天気とは言えなかった。まず函館山の裏側というか東側にある立待岬に行く。森昌子の「北の岬に　咲くハマナスの」の歌いだしの舞台である。
　またこの付近には「函館で死にたい」と言い残した石川啄木一族の墓があると云う事だが、雨の中を行く気はしなかった。啄木は２１才の時函館に来て、新聞記者などをしており、妻子や母、妹を呼び寄せてつかの間の幸せをかみしめたが、函館市内の３分の２が無くなるという大火に見舞われて単身小樽に移り、函館には３～４カ月しか居なかった。しかし、友人に恵まれ一家水入らずでで過ごした幸せが「函館で死にたい」との言葉になったのだろうか。啄木一家の墓は２６才で亡くなった啄木を物心両面で支え続けた宮崎郁雨という人の手にによって作られたのである。

　立待岬から恵山国道と呼ばれる国道278号線に出て、大森浜にある啄木小公園に行く。生前、啄木はこの浜を散策して歌を作ったということで、啄木の座像が建てられている。台座には「「潮かおる北の浜辺の砂山のかの浜薔薇（はまなす）よ今年も咲けるや」の歌が刻まれている。また「砂山の　砂に腹這ひ　初恋のいたみを　遠くおもひ出づる日」の歌碑が置かれている。隣には「土方・啄木浪漫館」があり、1階が土方歳三の、2階が石川啄木の記念館になっており、それぞれ別個に入場料が必要である。

　次に湯の川温泉に続く国道278号線を離れ台地に出て、日本最初の女子修道院であるトラピスチヌ修道院に行く。明治31年にフランスから来た8人の修道女によって創立されたものである。この修道院は現在も使われているので、前庭と建物の外観、資料館、売店などだけしか見学出来ない。雨模様の天気だったので見学する人は少なく、ゆっくり見られた。
　まず門を入ると「大天使聖ミカエル像」が正面に出迎えてくれる。大天使聖ミカエルとは天軍の総帥でサタンとその使いの者たちを打ち負かす大天使で、天文１８年（1549）に鹿児島に上陸したフランシスコ・ザビエルが薩摩藩主からキリスト教宣教の許可を得た日が聖ミカエルの祝日だったため、ザビエルは聖ミカエルを日本の保護者として宣教を始めた。この像は昭和２８年（1953）にフランスから贈られたが、損傷が激しくなったので、昭和６１年（1986）に鋳造し直した。ミカエル像の右後方の建物は資料館兼売店である。

　更に進むと前庭の中央に純白の聖母マリアの彫像が置かれている。フランスにあるラ・トラップ修道院のマリー・ベルナルド神父という人の作品だそうで、両腕をゆったりと広げ、すべての人を優しく迎え入れる姿と、台座に刻まれた言葉「慈しみの聖母マリア　やさしきみ母よ　みあとをしたう　か弱きこの身を　みちびちたまえ　聖ベルナールのいのり」から、｢慈しみの聖母マリア」と呼ばれている。

　前庭の中央にある階段を上がるとレンガ造りの修道院本館が現れる。中央の丸みを帯びたレンガ壁は祈りをささげる聖堂で、前面にある白い壁面に聖女ジャンヌ・ダルクの像が置かれている。ジャンヌ・ダルクは聖ミカエルからの神託により、フランスがイングランドからオルレアンを奪回した立役者になったのである。また神と人々のために命を捧げたので、修道女のシンボルとして敬われているのである。　（写真は修道院本館、聖堂、ジャンヌ・ダルク像）

２．恵山から大沼へ（５月２３日)

　再び国道２７８号線に戻り、函館の東側にある亀田半島の海岸線を行く。行き交う車は殆んど無く、晴れていれば青森県の大間岬まで見えるという快適なドライブコースなのだが、生憎と雨が降ったり止んだりで津軽海峡は白一色である。亀田半島の先端部には恵山（えさん）という小高い活火山（618m）があり、付近には温泉も湧出している道立自然公園がある。自然公園の入り口付近に道の駅「なとわ・えさん」があり一休みする。「なとわ」とは「あなたとわたし」というこの地方の方言だそうである。

　恵山には６０万本のエゾヤマツツジやサラサリンドウがあり５月中旬から６月初旬までつつじまつりが開かれているというわけだったが、まだ咲き始めで悪天候のせいもあり、観光客は殆んどいなかった。遠くに函館山がかすかに見える写真を1枚写しただけで早々に退散した。

　恵山を過ぎ太平洋側の沿線を走る。この辺りは函館市南茅部町という所で、ここで採れる昆布は身が厚く美味で、江戸時代には松前藩から将軍家に献上したことから献上昆布と言われ、今でも最高級昆布として主として関西の高級料亭に供給しているという。漁協の直販センターでも販売しているが、昆布の善し悪しは判らないので、天然真昆布しょうゆを買った。市販のしょうゆの３倍以上の価格だった。

　国道２７８号線を更に進み、鹿部町から大沼に行く道道４３号線に入る。JR大沼公園駅前に車を止め観光案内所からマップを貰って近くのビューポイントに行く。湖の中に島が点在する綺麗な風景だったが、駒ヶ岳はガスの中で眺望は望めず残念だった。大沼は雨の中でもモーターボートが行き交い、水が汚れるのではないかと心配になるほどである。

　帰りは国道５号線から函館新道に入り、湯の川グランドホテルに泊まる。レンタカーをここで返す。夕食はバイキングだったが、種類が豊富な上に毛蟹１杯、タラバの刺身、イカソーメンが別にオプションで出て皆旨く、食べ切れないほどだった。

３．函館ベイエリア（５月２４日)

　翌朝、雨は上がりホテルの部屋からも函館山が良く見えた。タクシーで市電の「湯の川温泉駅」まで行き、市電で函館駅に行く。市内電車に乗るのはいつ以来だったろうか。のんびりと揺られて函館駅前に着いた。　（写真はホテルの部屋からの函館山)

　函館駅から初日にあまりよく見られなかった金森倉庫群に行き、そこから函館明治館付近を見て歩いた。（写真は金森赤レンガ倉庫群、函館明治館）

　まだ時間があったので、更に函館ベイエリアの西波止場から海岸線をそぞろ歩き、ロイズのチョコなどの土産を買ったりしてゆっくり散策出来た。(写真はベイエリア周辺の風景)

　函館駅に戻って「はこだて駅弁味めぐり」という｢うに弁｣「鰊みがき弁」｢鮭はらす弁｣「いくら弁｣「つぶ貝弁｣「ほたて飯｣「かに飯｣「いか飯」が少しづつ入った弁当を買い(1,300円)、酒のつまみにした。函館から八戸まで在来線、八戸から上野まで新幹線、更に水戸まで乗継いで帰途に就いた。

　今回の旅は大沼公園へのドライブの日は雨に祟られ五稜郭にも行けなかったが、函館山からの夜景や元町教会群、ベイエリアの赤煉瓦倉庫群など函館の代表的景観を満喫できた。しかし電車で8時間の長旅は疲れる。今度出かけるチャンスがあった時は飛行機にしようと思う。