近畿の桜2

近畿巡り（2）　高野山

イバイチの
旅のつれづれ

　平成２７年４月８日（水）～４月１０日（金）
　　第１日　茨城空港―神戸空港―大阪城公園
　　　　　　　　　　　　　　　　　―天然温泉「浜乃井」スーパーホテル（泊）
　　第２日　高野山―吉野山―六甲ガーデンハウス―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　神戸グリーンヒルアーバンホテル（泊）
　　第３日　姫路城―神戸空港―茨城空港　
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3．高野山

①奥之院

　翌4月9日（木）は朝7時にホテルを出発する。朝食はお弁当である。お握りとおかずが可愛らしく並んでおり車中で食べる。今日は高野山から吉野山に行き、更に六甲山で夕食を食べるというので、強行軍であり朝も早いのである。今日も日本交通の専用バスに乗り一番後ろの席を指定して貰ったので座席を二つ確保出来、のんびり行けそうだ。(写真は朝食の弁当)

　阪神高速17号線に乗り、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを右手に眺めながら天保山ＪＣＴから4号湾岸線、阪和自動車道を経て、道の駅｢紀の川万葉の里｣で小休止し、9時半に高野山奥の院に近い中の橋の駐車場に着く。(写真は道の駅での日本交通のバス)

　高野山は弘法大師空海が、唐の都長安に渡り真言密教の教えを受け、弘仁7年（816）に高野山に修禅の道場を開いた。それから１，２００年後の平成２７年（2015）に高野山開創１２００年として記念法会が行われ、「金堂御本尊」が初めて「特別御開帳」され、また金剛峯寺持仏間御本尊の弘法大師像が他の歴代座主と共に「特別御開帳」されるというのである。

　また開創１２００年記念事業として堂上伽藍の中門が再建された。中門は天保１４年（1843）の大火で焼失し、安置されていた四天王のうち広目天、増長天の像も同時に焼失した。残された持国天と多聞天の像は根本中堂に移されていたが、今回の１７２年振りの中門再建に当たり、新たな広目天、増長天の像が造られ、この四天王がこれからの高野山を護ることになった。

　高野山は非常に広く、域内に高野町役場、高野山小・中・高校と高野山大学、警察署、病院などがあり、高野町という一つの町を形成している。平成１６年（2004）に高野山内の施設や建物などが熊野・吉野・大峯と共に｢紀伊山地の霊場と参詣道｣として世界遺産に登録されている。高野山内の主なものは「奥の院」「金剛峯寺」「壇上伽藍」「大門」「金剛三昧院」である。

　本来は高野山の入り口である大門から入るのが順路だが時間に制約があるため、一の橋から始まる奥之院口も通過し、バスはその先にある中の橋のある奥の院口まで行く。(写真は一の橋の奥之院参道入り口付近2景、中の橋駐車場の日本交通バス)

　一の橋から奥之院の一番奥にある空海大師の御廟までは約２ｋｍあるが中の橋からはその半分の１ｋｍの距離である。中の橋案内所から案内人が付いて空海御廟に向かった。参道には皇室、公家、大名や最近では企業関係の墓所が多数並んでおり、２０万基以上あるといわれている。その中に｢楽書塚」というのもあった。(写真は中の橋の参道入り口付近2景、大きな杉が聳える参道、楽書塚）

　墓所の多くは供養塔で江戸時代以前に建てられたものは五輪塔が多く最大のものは一番石とされている徳川２代将軍秀忠の正室であるお江の方のもので、高さ６.６ｍの巨大な石塔であるのだが、メインの通りから離れていて人通りが多く、遠くから眺めただけだった。加賀前田家の供養塔は３番目に大きいので３番石と呼ばれるそうである。前田家の墓所の前に浄土宗開祖の円光大師法然上人の墓所があった。(写真はお江の方の供養塔、前田家の供養塔、法然上人墓所）

　また越前藩初代藩主である松平秀康とその母お万の方（徳川家康の側室）を祀った「松平秀康および同母霊屋（たまや）」という石廟がある。これは全て石造りの家で出来ており、重要文化財に指定されている。芭蕉の「父母の　しきりにこいし　雉の声」という句碑もあった。（写真は越前前田家の石廟、解説板、芭蕉句碑）

　豊臣秀吉の墓所は参道より一段高いところにあったので離れた所から眺めた。大坂では秀吉の人気が高く、参拝する人が多いそうである。仙台伊達家の墓所は奥之院の入り口に当たる一の橋の近くにある。(写真は秀吉墓所、仙台伊達家墓所）

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　途中には「東日本大震災物故者慰霊碑」や「阪神淡路大震災物故者慰霊碑」や「沖縄戦戦没者慰霊碑」もある。他にも多くの企業や団体の墓、慰霊碑、供養塔が並んでいる。写真業界の墓所には顔写真が沢山並んでいた。写真は東日本大震災慰霊碑、阪神淡路大震災慰霊碑、沖縄戦没者慰霊碑、写真業界墓所）

　やがて御供所（ごくしょ）という建物の前に出る。ここは弘法大師にお供えする毎日の食事を調理するところで毎日朝６時と１０時半に御廟に運ぶそうである。御供所の先には水向地蔵というお地蔵さんが１０体以上並んでいる場所があり、水を手向けて先祖の供養をする人が後を絶たない。(写真は御供所、水向地蔵）

　水向地蔵の先にある御廟橋を渡ると弘法大師御廟への霊域となり、橋を渡る人は服装を正し、礼拝し、脱帽しなければいけないことになっている。またこの先は撮影禁止である。御廟橋からは、かなたに燈籠堂が見える。燈籠堂には祈親上人という人が初めて献燈したが、これを祈親上人のすすめで自らの髪の毛を売って献燈した女性に因んで｢貧女の一燈｣と言い、白河天皇によって献じられた｢白河燈｣と共に約千年の間灯が消えた事が無い燈籠だそうである。(写真は御廟橋からの燈籠堂）

　燈籠堂の中を左手に行くとお堂の裏に回り込めるようになっていて、そこに弘法大師御廟がある。拝礼の後、燈籠堂の右側面に出ると地下に入る階段がありそこを下る。地下には小さな｢身代わり大師｣が沢山並んでおり、その最奥部の弘法大師に一番近づくことができるという場所に祭壇があり、そこで拝礼した。

　弘法大師御廟あたりからは人が多くてなかなか前に進めず、所定の時間に遅れそうになったため、案内人は途中から並ばずに祭壇の前に出て、本来は一人ずつ数珠に触って拝礼するのを省略して全員一緒に拝礼して表に出た。

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②壇上伽藍、金剛峯寺
　時間もだいぶ過ぎて中の橋から金剛峯寺前の駐車場に下ってきたのは１１時３０分だった。高野山の参拝時間は約２時間とのことだったが、奥之院での参拝客が多く、時間がかかり過ぎたため、壇上伽藍、金剛峯寺の参拝時間は３０分に区切られた。

　まず、壇上伽藍に行く。弘法大師空海が高野山を開山した時、最初に整備をした場所で、真言密教の修学の場である。その中心は高野山の総本堂である「金堂」と真言密教の根本道場であり、日本の国の柱として建設した根本大塔である。

　金剛峯寺前から壇上伽藍に延びる小道を行く。この道は「蛇腹路」と呼ばれ、壇上伽藍を龍の頭とし、金剛峯寺の東側を尻尾としてとらえると、この小路は龍の腹の部分にあたることから名付けられたという。最初に出会うのは東塔である。平安時代後期の大治２年（1127）に白河法皇の発願で創建された多宝塔だが天保１４年（1843）の大火で焼失し、現在の建物は昭和５９年（1984）に再建されたものである。(写真は東塔）

　東塔の先に三昧堂という建物があるが、その前方に西行桜という桜の木がある。西行法師は高野山にも深く関わっており、三昧堂が平安末期にこの場所に移築された時、移築、修造に係わり、その記念に桜を植えたという。現在の桜は江戸時代後期に植えられた２代目である。写真は西行桜）

　更に進むと大きな根本大塔がある。弘法大師空海が真言密教道場のシンボルとして建設を始めた日本で最初の多宝塔である。現在の塔は昭和１２年（1937）に再建されたもので、高さは48.5ｍあるという。堂内は立体曼陀羅として構成されているそうだが、時間が無く見学は割愛した。(写真は根本大塔、案内板)

　根本大塔の隣が金堂である。金堂は平安時代から高野山の総本堂であり、当初は講堂と呼ばれていた。現在の建物は昭和７年(1932)の再建である。平成27年4月2日から5月21日までの50日間、高野山開創1200年記念として金堂の本尊である薬師如来像の特別公開が行われている。現在の本尊は昭和9年(1934)の金堂再建の時に高村光雲によって造られたもので、以来80年あまり厨子内に安置された秘仏になっている。(写真は金堂正面)

　金堂の前には再建されたばかりの中門が威容を示している。　天保14年（1843）に焼失してから１７２年ぶりの再建である。再建工事は平成２２年から始まっており、４年半掛かって今年(平成２７年) ４月から通れるようになったばかりである。通行できるようになってからまだ一週間しか経っていない真新しい中門を通りぬけた。(写真は中門正面))

　四天王は正面から見ると向かって左側に持国天、右側に多聞天と天保14年の火災から救出された二天王が安置されており、金堂側に新しく造られた広目天と増長天が同じく左右に安置されている。広目天は胸元に「蝉」のブローチを付けている。これは蝉が音を遠くに届けるということで、「威嚇」の姿勢を表しているそうである。また増長天は「とんぼ」のブローチを付けている。これはとんぼはまっすぐ前に飛ぶところから「不退転」の姿勢を表しているという。写真では胸元に付いているのが見難いかもしれないが拡大して探してみてください。(写真は持国天、多聞天、広目天、増長天の四天王）

　金剛峯寺は当初は高野山全体を現していたが、明治以後は総本山金剛峯寺として現在の寺院の名になっている。しかし壇上伽藍から奥之院まで高野山内の管理はこの総本山金剛峯寺が行っている。時間が無くなり、金剛峯寺は外観だけの写真になってしまった。(写真は金剛峯寺参道、表門、主殿入口、主殿外観）

　バスは12時ちょうどに金剛峯寺前を出発し、吉野山に向かった。

(以下次号)