置賜1

置賜さくら回廊 (２) 　白鷹町の桜

イバイチの
旅のつれづれ

　霞城公園―置賜さくら回廊―高畠町の桜
　　　　（平成１６年４月２２日、平成２０年４月２１日）
　　（その１）
　　　　　霞城公園、置賜さくら回廊(長井市）
　　（その２）
　　　　　置賜さくら回廊(白鷹町）
　　（その３）
　　　　　置賜さくら回廊(南陽市）、高畠町の桜

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（３）白鷹町の桜

　［④　釜ノ越桜］
　「白兎のしだれ桜」から少し北上すると白鷹（しらたか）町である。白鷹町で最初に見られる「釜ノ越桜」は白鷹町ばかりでなく置賜さくら回廊を代表する名木である。樹齢８００年、樹高２０m、幹囲６mのエドヒガンで、バックに残雪が残る朝日連峰があり、周囲も開けていて「さくら回廊」で一番の景観の場所である。（写真は平成２０年時の釜ノ越桜と残雪の山）

　そのせいもあって年々見物客が多くなり、駐車場も増設され、平成１６年には駐車料は無料だったが、平成２０年にはさくらまつり協力金として２００円の料金をとるようになっていた。そのせいもあってか「釜ノ越桜」の周囲は「釜の越農村公園」という名になり、広く整地されてゆっくり鑑賞できるようになった。売店も沢山出ているが駐車場と桜の間に置かれているため、桜見物の邪魔にならない。（写真は平成１６年時の釜ノ越桜、右後方は勝弥桜）
　この地の高玉地区には２００年以上前から伝わっている「高玉芝居」という地芝居があって４月下旬のさくらまつりには桜の正面に舞台が作られ、地元の人々による芝居が演じられるそうである。

　桜の下に３個の大きな石があるが、昔、八幡太郎義家がこの地に陣を構えた時、この巨石で竈を作り兵糧を炊いたことから、この地を釜の越というようになったそうである。「釜ノ越桜」の北側後方にある紅色の濃い桜は釜ノ越桜の二世桜で、約８０年前に１６歳の勝弥という名の少年が植えたため、「勝弥桜」と名付けられているという。（写真は３個の巨石、紅色の勝弥桜）

［⑤　薬師桜］

　「釜ノ越桜」から歩いて数分の場所に樹齢１２００年の「薬師桜」がある。高玉薬師堂境内にある樹高１０m、幹囲８mのエドヒガンで往時は薬師堂を覆い尽くしていた筈で、よじれた太い幹からも往時の姿が偲ばれる。この桜は征夷大将軍坂上田村麻呂が植えたと伝えられている。蝦夷との戦いに人の世の哀れを感じた田村麻呂が吹く笛の音に引き寄せられた美しい娘との間で情を通じたが、その娘は近くの沼に住む大蛇だった。ある日、田村麻呂は誤ってその大蛇を切り殺してしまったがあとでそれと知り、憐れんで手植えしたのがこの薬師桜であるとの伝説である。（写真は平成１６年の薬師桜２景と平成２０年の薬師桜）

［⑥　十二の桜］

　「薬師桜」をさらに北上すると県道から少し入った所に「十二の桜」がある。広々とした畑の中に駐車場や売店がある。十二というのは以前、薬師如来と十二神将を安置したお堂があったのでこの地が十二という地名になったという事である。この品種もエドヒガンで４００年経つ古株の根生えが大きくなったものだそうで、一応樹齢は４００年という事になっているが根生からはまで１００年以下の樹齢と思われる。（写真は平成１６年の十二の桜２景、解説板、平成２０年の十二の桜）
　白鷹町の桜案内標識は親切に出来ており、あまり迷わずに次の桜スポットに行ける。次に行ったのは「山口奨学桜」である。

［⑦　山口奨学桜］

　樹齢１００年のソメイヨシノである。案内板によれば明治時代にこの地の山口地区子弟の教育の向上、充実のために奨学田を作り、記念に桜を植樹したので山口奨学桜と命名したとある。付近は広々とした畑で、のびのびとして品格があり見栄えのする大樹に育っている。（写真は山口奨学桜３景）

［⑧　子守堂の桜］

　見晴らしの良い丘の上にある樹齢１０３０年、樹高２０m、幹囲７ｍのエドヒガンである。桜の樹下に子守堂があったので「子守堂の桜」といわれるようになった。子守堂には、昔城主の子供が病弱で困っていたが、ある日訪ねてきた童女を子守に付けたところ丈夫に育ったので、城主が褒めようと呼び寄せたところ、童女は丘の上に草履を脱いだまま姿を消してしまった。城主はその童女は地蔵菩薩の化身であろうと思い、その場に地蔵堂を建てて祀ったとの言い伝えがある。（写真は平成２０年の子守堂の桜２景と平成１６年の子守堂の桜）

［⑨　赤坂の薬師桜］

　「子守堂の桜」の少し先に「赤坂の薬師桜」がある。この桜は小高い丘に立つ樹齢９７０年といわれる樹高９m、幹囲６ｍのエドヒガンで、種まき桜として親しまれている。昭和の初めに近くの工場の火災で桜も半分焼けてしまったそうで、枝が１本だけの痛々しい姿であり後方から見るとオブジェのようだ。
　近くに赤坂薬師堂があるので、薬師桜と呼ばれており、釜の越桜近くにある薬師桜と同年代のものともいわれている。だが、丘の上で根張りが困難なためあまり大きくなれなかったそうである。（写真は赤坂の薬師桜２景）

　此処までが最上川左岸を北上したさくら回廊で、次の「称名寺阿弥陀堂の桜」から最上川右岸の国道２８７号線を南下して行くようになる。

［⑩　称名寺阿弥陀堂の桜］

　「赤坂の薬師桜」を過ぎ、最上川を渡って山形鉄道(フラワー長井線)の終着駅である荒砥駅から国道２８７号線を超えたところに称名寺という古刹がある。境内の墓地の中央にある阿弥陀堂の後に、樹齢３３０年、樹高１５mといわれるエドヒガンの桜がある。遠景の雪山とのコントラストが良いといわれていたが、生憎青空で無かったため、あまり良く撮れなかった。（写真は阿弥陀堂の桜２景）

［⑪　八乙女種まき桜］

　「称名寺阿弥陀堂の桜」から少し南下した荒砥駅近くに八乙女八幡宮がある。ここの境内に樹齢５００年、樹高２０ｍ、幹周４.５ｍのエドヒガンの桜がある。昔はこの桜が咲いた時が苗代に種をまく適期としたことから「種まき桜」と呼ばれてきた。

　この神社のある丘の一帯は荒砥城（八乙女城）址として史跡になっている。八乙女八幡宮は八幡太郎義家が東征の時この丘に弓矢を奉じたのが起源といわれる古社であり、その時８人の乙女に舞楽を奉納させたことから「八乙女八幡宮」と名付けられた。　（写真は八乙女種まき桜３景）

［⑫　原のしだれ桜］

　最上川右岸の国道２８７号線沿いには「種まき桜」から４キロほど南下した所にある「原のしだれ桜」と、更に２キロほど下って長井市との境界近くにある「殿入り桜」があるだけである。そのせいか観光客も見当たらず閑散としていた。
　「原のしだれ桜」は樹齢５００年、樹高２８m、幹囲５mのエドヒガン系しだれ桜ということである。付近に人家は少なく、広々とした野原の孤高の一本桜といった風情である。（写真は原のしだれ桜２景）

［⑬　殿入り（どのいり）桜］

　白鷹町最後の桜である。樹齢６８０年、樹高１６ｍ、幹囲６.６mのエドヒガンで、江戸時代後期に米沢藩主上杉斉定が当地方巡視の時、立寄ったという口伝から名付けられたという。
　この付近は殿入公園という名の小公園になっていて「殿入り桜」以外にも桜の木が沢山ある。桜の下にはシートなどを敷けるスペースがあって夜桜見物も出来るようになっており、地域住民の憩いの場になっているようだ。（写真は殿入り桜２景）

白鷹町では樹齢５００年以上の桜の古木7本を「しらたか古典桜」として保護し、また幟などを立ててＰＲを行っている。古典桜は今まで見て来た中にすべて含まれているが一覧表にすると次のようになる。（樹齢順）

県指定天然記念物
　① 薬師桜（樹齢１２００年）
町指定天然記念物
　② 子守堂の桜（樹齢１０３０年）
　③ 赤坂の薬師桜（樹齢９７０年）
　④ 釜ノ越桜（樹齢８００年）
　⑤ 殿入り桜（樹齢６８０年）
　⑥ 原のしだれ桜（樹齢５００年）
　⑦ 八乙女種まき桜（樹齢５００年）

（以下次号）

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