秋田3

'13 青森龍飛・秋田紀行 (3) 横手市の伝統的建造物

イバイチの
旅のつれづれ

　青森龍飛・秋田紀行
　　（平成２５年１２月４日～１２月７日）
　③１２月５日
　　新青森駅―盛岡駅―大曲駅―十文字駅
　　―増田中町（増田の内蔵見学）―十文字駅
　　―秋田駅　　ドーミーイン秋田（泊）
　　　　（ＪＲ、タクシー、バス）
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４．秋田県　増田の内蔵（伝統的建造物）
　翌１２月５日、新青森駅８時２３分発の東北新幹線はやぶさ１０号で盛岡駅に行き、秋田新幹線のこまち２３号に乗り換え、10時５７分に大曲駅に着いた。２時間半かかっている。大曲駅から奥羽本線に乗り換え、横手市の十文字駅に１２時近くに到着した。そこからタクシーで増田中町に行き、伝統的建造物を見ようというわけである。（写真は盛岡駅の「こまち」）

　秋田県では角館町（現仙北市角館）の武家屋敷街が重要伝統的建築物群保存地区（重伝建地区）に選定されていたが、平成２５年に横手市増田町の鞘付き土蔵（内蔵）がある地区が商家の町並みを良く残す建築物群として新たに選定された。
　ここの特徴は内蔵である。普通、蔵は母屋と離れて物品を保管する外蔵だが、増田の蔵は家の中にあって、鞘と呼ばれる屋根で覆われていたり、住居と蔵が一体になった生活空間になっている。増田町は江戸時代から交通の要衝として栄えており、明治以降も物資の集散が盛んで豪商たちが競って蔵を建てたが、火災や豪雪から守るため、高い屋根をつけて内蔵としたのだそうである。(写真は横田市のパンフレット)

　平成１７年頃からこれらの建物が伝統的建造物として注目されるようになり、｢蔵の日｣設定などにより現在は１４の国や市の登録有形文化財の家屋が常時公開されるようになった。しかし事前予約が必要だったり、有料だったりする家屋もあり、時間の制約もあるのでその中から幾つか選んで見学することになる。(写真は公開家屋案内掲示板、公開マップ)

　まず観光物産センター「蔵の駅」になっている「旧石平金物店」に行き、案内マップを貰う。増田の内蔵は物品を収納する「文庫蔵」と内部に床の間を配置した「座敷蔵」に別れる。「蔵の駅」になっている「旧石平金物店」の内蔵は「文庫蔵」として使用されていた。中に入ると成程高い建屋の奥に蔵が置かれていた。増田の商家は間口が狭く(9m～12m)奥行き(90m～180m)の長い短冊形になっており、蔵は母屋の最奥に置かれているので表通りからは見えないものが多い。(写真は観光物産センター「蔵の駅」、「旧石平金物店」文庫蔵前面２景）

　「蔵の駅」の斜め向かい側には「旧勇駒酒造」と「佐藤又六家」が並んで建っている。両家とも国登録有形文化財に指定されており、どちらか見学しようと思ったが「旧勇駒酒造」は無料だが予約制という事であり、有料（２００円）の「佐藤又六家」を見学することにした。(写真は「旧勇駒酒造」と「佐藤又六家」、「佐藤又六家」正面)

　「佐藤又六家」は現在も「マタロクカメラ店」を営んでいるが、江戸時代から続く旧家で街の中央部にあるので、火災予防のため、住まいも蔵造りにして欲しいとの要請があり、明治初期に店と家を建て替えた時に蔵造りにしたという事である。店舗も蔵造りなので「店(見世)蔵」と呼ばれている。店舗部分の奥は主屋で蔵造りの仏間、座敷、居間、水屋があり、現在も使用されているが掃除が行き届き、綺麗に整頓されている。居間には囲炉裏があり、自在かぎに鉄瓶を掛けられるようになっている。部屋上部の漆喰の部分が大分広い。店の奥さんが一緒に回って説明をしてくれた。(写真は「佐藤又六家」入口付近、座敷、居間２景)

　仏間の上部は神棚になっていて社の中に鏡が納められているが、棟梁が宮大工だったので社寺装飾で造られているとのことだった。
水屋との間には掛子塗という段付きの扉の土戸で仕切られている。そして更にその奥には白い漆喰の扉の先に文庫蔵があり、「座敷蔵(見世蔵)」と「文庫蔵」を備えたこの地区最古の蔵造りになっている。（写真は仏間、水屋、文庫蔵入口付近)

　次に入り口近くに戻って「通り」と呼ばれる通路から２階に上がると、表通りとガラス戸で仕切られた内部に、掛子塗の綺麗な白と黒漆喰の段付き扉があり、上部にも漆喰の装飾が施されて豪華な感じの「座敷蔵」であることが改めて判る。（写真は「通り」、２階表通り側の扉、２階座敷内部）

　表通りに出て「佐藤又六家」の真向かいにある「山吉肥料店」に行く。ここも有料（２００円）であるが、その分ただ見て回るだけではなく説明をしてくれるので良く判る。ここの主屋は明治の建物だが内蔵を建てた昭和初期に改修されたということである。昭和初期になると社会・経済情勢の変化などで昔ながらの土蔵(内蔵)造りは減少しており、当家の内蔵はその最後を飾る増田の蔵造りの集大成と位置付けられているということである。(写真は「山吉肥料店」正面)

主屋は蔵造りではないが配置は「佐藤又六家」と同じく仏間、座敷、居間、水屋の構成であり、その先に「座敷蔵」がある。ここの内蔵は座敷蔵だが内部は非公開になっていて結婚式などの身内の冠婚葬祭の集まりに使用されるという事である。(写真は仏間、座敷）

　内蔵は黒漆喰の段付き掛子塗の重厚な入口があり、その扉や側面の扉は漆塗り鼈甲の組子細工で造られた鞘飾りという覆いで修飾されている。建物の裏手に回ると内蔵を覆う鞘の大きさが良く判る。(写真は内蔵入口付近２景、側面の窓扉、裏手から眺めた鞘）

　４番目に主屋が木造三階建ての｢旧石田理吉家｣に行く。ここも有料（３００円）であるが、説明する人は居らず、パンフレットを貰ってそれを見ながら見学するようになっている。三階建ての主屋は昭和１２年の建築だそうで、現在でもあまり見かけない珍しい建物であり、当時はさぞ話題になったことだろう。この主屋は２階に和室と洋室があり、３階は大広間になっているので、居宅では無く応接用の離れとして使用されたらしい。(写真は入場券、主屋正面、主屋２階の洋室と和室)

　内蔵は明治１４年に建てられた座敷蔵で、主屋の３階の窓から鞘が眺められる。
　蔵入口の開口部は黒漆喰で、他の部分は白漆喰の磨き漆喰仕上げで、１００年以上の光沢が残っている。１階は板の間と座敷の二間になっている。(写真は主屋３階からの鞘、内蔵入口付近２景)

　２階は収蔵庫だが巨大な梁や棟木の豪快な小屋組みを見る事が出来る。また座敷蔵側面の腰は鞘飾りがずっと張り巡らされている。(写真は内蔵２階２景、内蔵側面)

　時間もだいぶ過ぎたので、最後に少し離れた場所にある「佐藤養助商店漆蔵資料館」に行った。ここも国登録有形文化財になっている。佐藤養助商店は日本三銘うどんの一つである稲庭うどんの総本家である。
秋田県南端にある湯沢市稲庭町が発祥の地で、そこには稲庭うどんの里があり１８軒のうどん店があるが、佐藤養助商店はその中でも最大の工場を持っている。東京その他にも直営店を多く持っているが、その一つとして平成１３年に増田町に進出し、旧商人で大地主だった人の蔵を改造し「漆蔵資料館」として開館した。(写真は「佐藤養助商店漆蔵資料館」正面、口上書）

　ここの座敷蔵は大正１０年に建てられ、開口部は磨き漆喰仕上げ、外回りは白黒の漆喰仕上げである。木の部材や小屋組は漆塗りで仕上げてあり、贅を尽くした造りであり、当時の大工や左官の技術の粋を集めた究極の蔵といわれている。（写真は内蔵入口付近、１階内部、側面の窓扉)

　漆塗りの階段を上がり二階に行くと「佐藤養助稲庭干饂飩」の多くの資料が展示されている。それによると稲庭干饂飩は江戸時代初期の佐竹藩主の御用製造から始まり、明治以後は宮内庁御買上から発展して行った事が関連資料の陳列と共に展示されていた。(写真は漆塗り階段、２階の梁）

　同時に造られた米蔵には正面や扉は黒漆喰仕上げで、上部には鏝絵の装飾があるなど豪華な造りになっている。ここは昼時は食事処になり、午後は「お休み処蔵」として無料開放されている。（写真は「お休み処蔵」入口付近、内蔵後部付近)　

　内蔵の手前は土産物コーナーや食事処になっておりそこで遅い昼食の稲庭うどんを食べた。帰りは増田中町からのバスに乗り、十文字駅から奥羽本線で秋田駅に１６時３０分ごろ着いた。
　今夜と明晩は温泉のある「ドーミーイン秋田｣というシティホテルである。(写真は昼食の稲庭うどん、ホテルドーミーイン秋田入口）