宮古浄土ヶ浜

'12 盛岡・北三陸紀行 (3) 宮古浄土ヶ浜

イバイチの
旅のつれづれ

　盛岡・三陸海岸北部紀行
　　　（平成２４年９月２日～９月５日）

　　　盛岡（泊）―旧渋民村―宮古浄土ヶ浜―
　　　休暇村陸中宮古（泊）―北山崎―
　　　龍泉洞温泉（泊）―龍泉洞―盛岡
　　　　　　（観光バス、レンタカーで）
***************************************************************
５．宮古市浄土ヶ浜

　石川啄木記念館から盛岡に戻り、国道１０６号線を宮古に向かう。途中「区界（くざかい）高原」「やまびこ館」という道の駅を通るが、道の駅「やまびこ館」で休憩した時、｢平成の三陸大津波｣という写真集が目を引いた。表紙には津波が防潮堤を乗り越えて車が流される写真が大きく載っている。前日盛岡駅頭で、釜石で被災した人から話を聞いたことが頭にあったので、中をめくってみると陸前高田、大船渡、釜石、宮古、久慈などの大きな被害を受けた場所が津波で街が呑み込まれる状況を写した写真が沢山載っていた。価格は１,０５０円だったので、早速購入した。

　写真集の表紙の写真は宮古市の防潮堤を越える大津波の様子だった。中にも同じ場所から撮った写真が何枚かあった。撮影場所は市役所の５階と書いてあったので、同じ場所から現在の状況を撮って比較してみたいと思い、宮古市役所に行ってお願いしたところ少し待たされた後、案内して貰って同じ場所から現在の状況を写した。写真集には少し離れた場所で漁船が防潮堤を乗り越えた写真があったのでその場所も写した。

　津波の時の写真と現在の状況を撮った写真とを並べて載せようと思い、帰宅してから出版元の岩手日報社に写真の使用許可を申請しようとしてメールで問い合わせたところ、ＷＥＢ上での利用は記事の当事者と取材対象者に限定しているので許可できないとの回答があった。
　著作権保護コンテンツやプライバシー保護の観点からの処置だと思うが、そういわれては載せる訳にはいかないと思い、表紙はＷＥＢ上にも多く載っているので、表紙だけを掲載することにした。(写真は市役所の写真集表紙と同じ場所から写したものと写真集表紙)

　現状の写真は閉伊（へい）川が穏やかに流れ、防潮堤を挟んで国道１０６号線が走っている日常の風景であり、津波がそこを乗り越えて真っ黒い濁流となって襲いかかるとは、その時の映像が無ければ想像もできない光景である。(市役所からの現在の景色、左が漁船が防潮堤を乗り越えた付近)

　その後魚市場近くまで行き何枚か写したが、そこに行くまでも家の土台しかない場所が続き、震災後1年半経っているのに復興は遅々として進まないことを実感した。(魚市場付近４景）

　やがて浄土ヶ浜第1駐車場に着く。ここには浄土ヶ浜ビジターセンターがあり、島めぐり遊覧船や青の洞窟遊覧のさっぱ船発着所に続く遊歩道がある。しかし昨年の震災により遊歩道は通れず、大回りして宮古港海戦記念碑から階段を下りて行く道順に変更されている。浄土ヶ浜は陸中海岸国立公園の中心となる景勝地であるがここも津波に襲われて大きな被害を受けた。しかしがれきの撤去が進み、閉鎖されていた海水浴場も今年(平成24年)から復活した。それに合わせて２階まで津波の被害を受けた浄土ヶ浜レストハウスも今年７月から営業を再開した。しかしまだ一般車は通行禁止で、バスとタクシーだけが浄土ヶ浜海岸の一方通行の道路が走れるということである。（浄土ヶ浜ビジターセンターからの遊覧船乗り場）

　とにかく遊覧船に乗ろうとボランティアの人から案内図を貰い説明を受けて、まず浄土ヶ浜を囲む白い岩が入江を形作っている景観がよく見える御台場展望台に行く。ここは戊辰戦争で政府軍と旧幕府軍が戦った時、砲台が置かれた場所だそうである。この時宮古港には政府軍の艦船８隻が停泊していたが、そこに旧幕艦「回天」が１隻で戦いを挑み、激しい海戦が行われた。それを記念して入口に宮古港海戦記念碑が建てられている。（宮古港海戦記念碑、御台場展望台、展望台からの浄土ヶ浜）

　御台場展望台からの浄土ヶ浜方面の眺めは流紋岩という白くとがった岩が林立して晴れていれば松の緑と白い岩肌、群青の海、紺碧の空が一幅の絵のように見えるというがあいにく薄曇りでコントラストの対比はもう一つだった。（展望台からの浄土ヶ浜と切り立った崖)

　御台場展望台から急な階段を降り、トンネルを抜けると現在は通行止めになっている本来の遊歩道と合流し、遊覧船の桟橋に着く。（写真は通行禁止の遊歩道、遊覧船桟橋、ウミネコ群と浄土ヶ浜）

　遊覧船は浄土ヶ浜からウミツバメの繁殖地である日出（ひで）島を一周して、休暇村のある近くの姉ヶ崎という所まで回遊して来る４０分のコースである。運賃は１,２２０円で一日５回運行している。遊覧船が走りだすと船内で販売している特製のうみねこパンを求めてウミネコが群れをなして飛んで来る。(写真はウミネコ群と姉ヶ崎付近からの帰路）

　ローソク岩とか潮吹穴とか名付けられた岩があるがガイドの女性はそれと共に、津波のために家が流された場所や地盤が沈下して堤防が壊れた場所の話をしてくれ、被害の甚大さを解説してくれた。遊覧船も２隻あったうち１隻が修理のためドックに入っていたのは壊れてしまい、１隻が船長他２名の乗組員が必死に沖合に逃げ、まる３日間戻れなかったが、その間特製のうみねこパンで飢えを凌いだとか、遊覧船発着所も津波の被害を受け、その時の浮きが１０メートル以上の松の木に引っ掛かったものがそのままになっているなどとの話もしてくれた。(写真は浄土ヶ浜の外壁、ローソク岩、破壊された堤防２景）

　また宮古市の東南端に本州最東端に位置する?(とど)ヶ崎灯台があるが、映画｢喜びも悲しみも幾歳月｣はこの灯台に配属された灯台守の妻である田中キヨさんの手記をもとに創られたということで、その主題歌を歌ってくれた。この映画は佐田啓二と高峰秀子が主演で、主題歌は若山彰が歌って当時は大いにはやった歌だったことを思い出した。(写真は日出島２景と遊覧船乗り場の浮きが引っ掛かった場所)

(以下次号)

注）　画面をクリックすると大きくなります